
第94回北海道大家塾は、9月27日(土)に札幌駅近くの北農健保会館で開催され、会場セミナーに61名、You Tube ライブ(限定公開)同時配信によるWEBセミナーには47名、計108名の方にご参加いただきました。
第一部はCOSOJI株式会社 執行役員 ・エバンジェリスト宮川沙織氏に『「管理会社はつらいよ!?」⼤家さん事件簿で学ぶ、愛され⼤家さんのススメ 〜現場のリアルとAIで変わるこれからの管理〜』というテーマでご登壇いただき、「大家さん事件簿」形式で、管理会社の”現場のリアル”をご紹介いただきました。
第二部では、『もしも不動産屋が入居者のために食堂を開いたら…』というテーマで、神奈川県の管理会社有限会社東郊住宅社 代表取締役 池田峰氏にご登壇いただき、同社で運営している入居者のための食堂「トーコーキッチン」の取り組みについてご紹介いただきました。
サポートパートナーの企業紹介では、人気NO1の都市ガス物件ならおまかせの北海道ガス株式会社様にご案内をしていただきました。
また、サポートパートナーブースにて、参加者様からの質問等にお答えいただきました。

【第一部】講師紹介

「管理会社はつらいよ!?」⼤家さん事件簿で学ぶ、愛され⼤家さんのススメ
〜現場のリアルとAIで変わるこれからの管理〜
第一部は、不動産管理のあらゆる業務をワンストップでサポートする革新的なサービス「COSOJI(こそーじ)」社の執行役員でエバンジェリストの宮川 沙織(みやかわ さおり)氏にお越しいただき、「管理会社はつらいよ!?」⼤家さん事件簿で学ぶ、愛され⼤家さんのススメ 〜現場のリアルとAIで変わるこれからの管理〜というテーマでお話しいただきました。
ヤクルトレディから始まり、配達中にスカウトされた小さな不動産会社での管理業務をきっかけに地元に根付いた「人ありき」の管理会社でお手本になる先輩もいない中、ご自身の試行錯誤でノウハウを積み上げてきた宮川さん。
「仲介や売買でもなく、やっぱり管理が好き!もっと管理業界を良くしたい!」
という思いで、日々邁進されております。
管理会社にとってオーナーさんと入居者さんは同じぐらい大事なお客様であり、どちらにもご満足いただくためにはバランスが大事だとおっしゃり、過去にあったオーナーさんとのトラブル事例を「大家さん事件簿」として、思わず笑ってしまうエピソードと共にご紹介いただきながら、管理会社と大家さんが上手に付き合っていく方法を教えてくれました。
また、後半ではCOSOJIというサービスが今後AI技術を駆使して、今後どのように管理会社やオーナー様にとって使いやすく変化していくのかをご紹介いただきました。
【不動産管理会社の実情】
管理業界は離職率がすごく高い業界だそうです。
理由はやはり、固定給が低いのに激務だから。
管理は自分で「今日こそは、~の業務を何件終わらせよう!」と思ってスケジュールを組んでいても、入居者からの1本の電話ですぐに行かなければならなくなったり、突発的なクレーム対応で1時間電話で取られてしまうというようなことが日常茶飯事だそうです。
また、土日に退去の立会いだとか何かしらの業者との立会い、オーナーさんとの工事内容を決めるための立会いであったり…土日の休みが取りにくいのも特徴です。
更には、IT化が進んでおらずアナログな業務もいまだに多く、人の頭の中だけに頼ってしまえば大きなトラブルも回避できないというようなことが多いそうです。
不動産業界は、一般的に花形と言われるのは売買の部門です。
そこで売上が上がらないと、賃貸の仲介に異動となりますが、そこでも売上が上がらないという人が、管理部門に来ることが多いのですが、仕事の内容で見れば一番コミュニケーション能力と調整力が求められるのが管理部門ではないかと宮川さんは分析します。
【大家さんへのアドバイス】
管理会社を利用する大家さんには、ぜひ一度「管理委託契約書」を熟読していただくことをおすすめしています。「管理料5%だよね~」ぐらいは認識している大家さんがほとんどですが、具体的にどこまでの業務をやってくれる内容になっているのかも今一度見直していただくようにとアドバイスされていました。
中には、入居者間のトラブル(音問題など)には一切関与しませんという管理会社もあるそうです。
それ以外にも、契約期間や解約予告期間、売却する場合の管理縛りなどを確認しておいたほうが良いとのこと。何か物件での故障トラブルが起きた場合に、オーナーの承認を得ずに発注して良い金額の上限を決めておくことも大事だとしています。
特に、給湯器やエアコンなど故障してしまうと入居者さんの生活に大きく影響するものの場合はある程度のルールが最初から決まっている方が、トラブルの長期化を防ぐことができるとも。
【愛され大家さんのススメ】
・ルールを守る
→支払のタイミングや支払い方法(一括・分割)は守りましょう。
・常識を持つ
→深夜の電話や休日のメール返信を求めない。
・感謝の気持ち
→「ありがとう」の一言で救われるものです。
・現場への理解
→管理業務の複雑さや難しさを理解して、会社全体としての対応を待てる余裕を持つこと。
・コミュニケーション力
→自分の要望を整理して伝え、管理会社からの提案も柔軟に受け入れる。
これがあるだけで、現場との信頼関係は一気に深まります!!
【COSOJIのこれから!】
ビル管理、夜間清掃の業界では慢性的に人手不足の問題があり、属人的な管理から仕組み化へのシフトが課題だとおっしゃる宮川さん。
COSOJIでは、そこに入れば施設管理のことから、アパートの清掃・建物の管理など適切にできる、という仕組みを提供しようとしています。
現在はAIのエンジニアも多数採用し、様々な機能の開発を進めている段階だそうです。
管理会社にたくさんの報告書の中から特に緊急度の高いものをAIがすぐに判別してくれて、改善策までを提案してくれるという機能をリリースする予定だそうです。
オーナー様の立場からすると様々な問題を見つけてそれを改善する提案を迅速にほしいけれど、管理会社もなかなかそこまではできないというケースが多いですが、そこをCOSOJIのAIですぐに提案できる状態にするという目標を定めて現在その基礎を作っている段階であるとのこと。
また、図面をアップするだけで、どういう施設管理が必要なのか、今すぐ工事が必要なもの、そうでないものも含めて長期的に見て、提案書を作成してくれるという機能の実装も進めており、多くのオーナー様から期待の声が膨らんでいるようです。

塾長 原田の感想
宮川さんのセミナーは、私の予想を超えて非常に勉強になりました。
体当たりで管理会社を立ち上げ、多くの大家さんに応援されながら数々のトラブルや課題を解決してきた経験をシェアしていただきましたが、大家さんにとっても大変参考になったのではないでしょうか。
また「どこまでを管理会社に依頼するのか」という線引きについてもお話がありました。これは事業者同士としてとても重要な視点です。こうした知識は 不動産実務検定2級でも学べますので、「少し心当たりがある」「自信がない」という方は、ぜひ2級講座を受講してみると良いでしょう。
宮川さんは最後にCOSOJIの紹介をしていましたが、私もユーザーの一人です。こうしたツールを活用し、管理状況を改善していく取り組みは非常に有効です。お試しクーポンも出ていますので、まだ使ったことがない方はぜひご利用ください。
【第二部】講師紹介
もしも不動産やが入居者のために食堂を開いたら…
第二部では、神奈川県相模原市の淵野辺という地域で管理会社を営まれている有限会社東郊住宅社 代表取締役 池田 峰(いけだ みね)氏にご登壇いただき、
「もしも不動産会社が入居者のために食堂を開いたら…」
というテーマで淵野辺という土地でのトポフィリア(アメリカの地理学者の造語でトポス(場所)+フィリア(愛情)をかけ合わせた言葉で場所と人との情緒的なつながりを意味しています)な取り組みについてお話しいただきました。
トーコーキッチンとは、池田さんが経営されている不動産管理会社である有限会社東郊住宅社で管理している物件に住む方のための食堂です。
街の中にひとつ食堂があって、その周辺にある東郊住宅社の管理物件1,800戸の様々な物件から人が来るという仕組みです。
まず大前提として、トーコーキッチンのお話は、「食堂」という突飛なものがあって、形として存在しているゆえに、どうしてもそこに寄ってしまって「自分ではできないなぁ」とか「札幌ではこれは無理だな」とか、様々な考えを持たれるかと思いますが、池田さんは「重要なのは食堂であることではなく、そのスキーム(特定の目的を達成するために設計されたプラン、計画)である」とおっしゃっておりました。
【淵野辺ってどんな街?】
神奈川県相模原市にある淵野辺という街は、JR横浜線の沿線にあるひとつの駅で、元々乗り換えのターミナル駅になっている駅でもなく非常にローカルな小さな駅です。
ただ、そこには青山学院大学、麻布大学、桜美林大学の3つの有名大学のキャンパスがあり、全国各地から大学生が親元を離れて住む街でもあります。
【東郊住宅者の当時の課題】
①男子学生の親御さんによる食事付き学生マンションに対する需要の高まり
②空室増加による家賃下落傾向への対策
③物件属性やオーナーに依存せず、1,800室すべての資産価値を一気にアップさせる裏技
②に関しては、家賃を上げるためにオーナー様が物件の設備に投資したり、オーナー様の努力によって客付けをして、そこに対し管理会社として収益をいただくというスタイルは池田さんの価値観には合わなかったと仰っておりました。
自分たちの企業努力でオーナー様がたにも自分の会社に預けてくれている意味というものを形作りたいと思ったということです。
③に関しては、答えは簡単で「企業努力」である、と池田さんは仰ります。
しかしながら、企業努力は伝えるのが難しいとも。
サービスは受ける立場にならないと対価を見出だせないもので、例えば何かあった時には24時間対応しますよって言ってても、実際に入居者様が真夜中の対応が必要な事態にならない限りは企業努力としては伝わらないものであると。
そのようなことを考えながら過ごしていた時に、忘れもしない2014年の忘年会でふと思いついたのが「食堂」だったそうです。
【トーコーキッチンは「食」を媒介にした自社媒体】
池田さんがこの食堂で求めたものは「コミュニケーション」です。
コミュニティとして囲い込みをしようとしているわけではなく、純粋にコミュニケーションを求めて、そのコミュニケーションを取るのに最もハードルが低いのが「食」であったと話されておりました。
トーコーキッチンの鍵を持っている人は、約3,000人の入居者様、200人のオーナー様、取引のある業者様(内装屋さんなど)で、集まる方々はそこで新たな交流を生んだり、普段は無愛想なオーナー様が食を通して笑顔になられたりなどコミュニケーションから得られる効果をいくつもご紹介いただきました。
実際に、トーコーキッチンを始めてからは入居者様の満足度が上がり、営業時間外の対応要請が8分の1まで減ったということで、コミュニケーションを通して知り合うことの価値は非常に大きいということでした。
【淵野辺と東郊住宅社の今】
元々は淵野辺近郊の3大学からの反響を狙ってのスタートでしたが、トーコーキッチンを利用したいばかりにどんどん最寄り駅ではない大学の学生まで淵野辺に住むようになっているようです。最近では、まだ受験もしていない親御さんから「再来年入居の予約はできますか?」という問い合わせまで来ているようです。
また、家賃の設定に関しても元々相場より高めなのに家賃交渉はほぼなく、食事の提供というところに価値を見出していただいているそうです。
また、近年では高齢になった親御さんを呼び寄せるお子さん世代も多くなり、大学生の親が子供の食を心配するように、高齢者の子供もも親の食を心配しています。
そういった方たちにもトーコーキッチンがある淵野辺は人気が高まっているそうです。
東郊住宅社では、70歳以上の単身者で近所に身寄りがいない方には月1回はお電話をするようにしているそうで、元々つながりのあった高齢者の入居者様を対象に2020年9月からはトーコーキッチンでのスキームを利用して新たなサービス展開を始められたそうです。
それは、ゴーヨーキーキー(ご用聞き)というサービス名称で買い物代行や草刈り、時にはおしゃべりなどの暮らしのサポートをするというものだそうです。
管理会社としても、お金をいただいてお手伝いをしながら高齢者の住んでいらっしゃる部屋に入れるというのは状況を確認するのにも役立っており、メリットが非常に大きいと仰っておりました。
【淵野辺と東郊住宅社のこれから】
現在1,800戸の物件管理をしていますが、2,000戸を目標としており、これ以上、場所を変えて増やすということも考えてらっしゃらないということで、その2,000戸を今と同じ労力で仲間たちの取り分であったり、提供するサービスの質を保っていきたいと仰っておりました。
「不動産業はエンタメ業であり、そこでの暮らしを楽しくすることに携われる、そこで暮らす365日24時間続くものに対してのアプローチができる稀有な仕事です。こちらが心の琴線にふれるサービスをすると、こちらの琴線にふれるリアクションが返ってくるものです。」
とにこにこ池田さんらしい笑顔でお話しいただきました。
場所と人との情緒的なつながりが造成されてトポフィリアな環境になっていくと、オーナー様・入居者様・管理会社がフラットな関係で楽しくそれぞれの持ち場で楽しく暮らしを営んでいけるのではないか?ということで、それがまた池田さんの希望する暮らしであるということで、セミナーは締めくくられました。

塾長 原田の感想
池田さんのお話はとても刺激的でした。
成功事例として語られましたが、実際には裏で多くの苦労があったプロジェクトだそうです。
きっかけは、自社管理物件に入っていた飲食店の経営不振から事業を引き取り、食堂として再スタートさせたこと。
ニュージーランドから帰国後の新しい挑戦のタイミングでもあったそうです。
内装費を抑えつつも、一定の初期投資は必要でしたが、「小さく始めて失敗しても大きなダメージを負わない範囲で」と戦略的に取り組まれたとのことでした。
デザイン会社での勤務やニュージーランドでの経営経験を持つ池田さんだからこそ、ビジネスデザインやファン作りに長けており、当初想定した通りの効果を上げているそうです。
こうした取り組みは他の管理会社でも応用可能ですし、個人オーナーであっても「入居者に感謝を伝える仕掛け」を考えることは、長期入居に繋がる大きな戦略になると感じました。
例えば、溝口の越水さんが地域の野菜を収穫したときに入居者へ配ったり、ボジョレー・ヌーボー解禁日にワインを置いておく取り組み。こうした工夫も入居者に「気遣ってもらっている」という感覚を与える有効な仕掛けになると思います。
私自身の物件でも、例えば事務所の上にある賃貸部分に野菜や飲み物を置くなど、これまでやっていなかった工夫をしてみることも有効だと感じました。
今回のセミナーを通じ、ぜひ取り組んでいこうと思えました。
開催記録
●日 時:2025年9月27日(土) 13:30-18:00
●参加人数: 108名(会場参加:61名、WEB参加:47名)
懇親会の様子(会場:ホテルポールスター札幌)


今回の北海道大家塾へのご感想をお聞かせください。
たくさんの参加者の声を頂き、ありがとうございます。
☆一部のみ掲載させて頂きました☆
●宮川さんのお話の中で、修繕の際の大家側の心構え等についてのお話が大変参考になりました。池田さんの「入居者に何でもしてあげて~」というお言葉にも励まされました。
札幌市 辻本 克子様
●第1部:宮川さんの「愛されるオーナー」の姿について、とても参考になりました。改めて心がけたいと思います。
第2部:池田さんの「トーコーキッチン」の話は、とても参考になりました。特に他人がやりやすい差別化は、いずれ同一化になっていくという話は、なるほどそうだなぁと思いました。
旭川市 梅野 牧 様
●第一部のCOSOJI宮川様のお話も、とても面白く、愛される大家にならないといけないと感じたのと、やはり管理会社様との普段からの信頼関係と当たり前ではなくて感謝する気持ちを常に持たないといけないと思いました。
第二部の池田様のお話も、とても面白く、昭和の時代の下宿屋さんのような懐かしく人と人とのコミュニティの場として、現代の希薄になる人間関係を凄く良い形で実践されていて、素晴らしい管理会社の在り方で、自炊するよりも安くて年中無休で3食提供されていることに運営の仕方もただただ感心してしまいました。
札幌市 池上 留意様
●管理会社さんから嫌がられる大家さんがどんな人かわかり、勉強になりました。(宮川さん)
管理会社さんの苦労が垣間見えて、感謝の気持ちがさらに強くなりました(宮川さん)
管理会社さんが付加価値のある特別感のあるサービスを提供して、入居率を上げる取り組みが素晴らしかったです(池田さん)
富山市 小山 力大 様
●宮川さん
・トラブルの前に予防保全をすることの大切さ
・管理会社とのコミュニケーションを密にすることが重要
・現場で写真を撮るだけでAIが自動で振り分け、報告書や提案書まで作成してくれる仕組み
池田さん
・「空室不足」という初めて耳にした言葉です。普通は空室が多くて困るのに、逆に部屋が足りないというのは凄いと思いました・
・トーコーキッチンを運営することで子ども食堂や高齢者見守りサービスにもつながり、社会的意義があると思いました。
・さらに、入居者とオーナーが直接話せる場を作っているという点も素晴らしいです。
札幌市 古田 裕規 様
●第一部では管理会社からの立場で参考となりました。クレーム電話は切った後に吐き出すのがルール化としては面白くて大事だなと思いました。
第二部は、これからの賃貸業でのワクワクする可能性を感じられました。人と人とのつながりが希薄となっている現代に必要なサービスだと思いました。
札幌市 S・T 様